『電気ポットに無実の証拠』 |
この裁判の大きな問題点の一つは、単独犯による被害者ふたりの殺害が可能かどうかということです。東京高裁の判決では「単独同時殺」と認定されています。 判決は、女性が便所に入って男性がひとりになったとき、流しの前でまず「男性を攻撃」し、そのあと便所の中にいる「女性を攻撃」したと言っています。このストーリーが成り立つのは「女性が流しの前に行っていない場合」に限られます。しかし、この設定には無理があります。 弁護団は丹念に証拠を吟味した結果、全くの逆の状況証拠を発見するにいたりました。 今回最大の「動かぬ証拠」は、流しの下に倒れていた電気ポットでした。 電気ポットに無実の証拠が! 弁護団は、法医学者の協力を得て、どうしたらこのような血痕の状態になるのか、さまざまな実験をしました。判決は「犯人が返り血を洗うために、流しに近づいたとき、その血が滴下して付着した」としていますが、血痕の軌跡〔流れた方向〕はポットが立っている状態でしかつかないものであり、横になっている状態でついたとすると、血液が下から上へ流れた!という、不可能な状況になります。 |